PeaceMedia
フリーペーパー 【PeaceMedia】
 京都の市民運動・イベント情報
郵便口座番号: 00910-6-316096
郵便口座名称: ピースメディア

トップページ > TOPICS・コラム・連載 > 「へいわ屋」 > 「漫筆」 第7回

 『へいわ屋漫筆』 第7回 ダヴィドはどこへ行った

【PeaceMedia】

へいわ屋
新作Tシャツ

"No Peace, No Life" (クリックすると拡大)
おかげさまで
好評発売中です!
半袖 1500円
長袖 1700円

【カラー:4種類】
ベビーピンク
ベビーブルー
生成り、黒





第7回PDF版 :

  65年前、ドイツはラドム州にいた、ダヴィドという子の日記を読んだ。彼は
 14歳。「シオンの星印」の腕章を巻きSS(ナチス親衛隊)の徴収(という名の
 略奪)に苦しむ日々。農村のユダヤ人たちが、ナチスによる迫害の元、いかに
 過ごしたかがよみとれる。(都会っ子のアンネ・フランクの日記と好一対)
 インフレ、徴用、強制労働…。彼らを襲う苦境は引きも切らないが、人にとって
 何より耐え難いものは、やはり大切な人との別離のようだ。ダヴィドの父は
 辛くも帰ってきたが。

  この日記は1942年6月1日分の途中で突然途切れている。ダヴィドはここで
 居眠りをはじめたのだろうか。この日記帳がどこかへ紛れ込んでしまったの
 だろうか。それともダヴィドがどこかへ行ってしまったのか。 どこへ?

 店主は筑摩書房ノンフィクション全集28巻(昭和34年刊)で『ダヴィドの日記』
 を読んだが、この作品の前には 『アウシュビッツの5本の煙突』 『白バラは
 散らず』 が収録されていた。ユダヤ人強制収容所内の実際や、息詰まる
 戒厳令下でそれでも興った抵抗運動の記録がじっくり読める。

 戦時独裁下の民の不幸とはどうだったか、が、これ1冊でも多角的に読者の
 脳裏に刻まれる構成になっていて秀逸だ。

  ノンフィクション全集が刊行されたのが「全集モノ」の出版ラッシュだった
 時代だからだろうか。斬新な構成や読者サービスは画期的である。現在の
 出版にも、こんな「人間味ある努力の痕跡」が見てみたいと願う。

  この全集は古今東西の記録作品を集めた大部で、今ではよくバラ売りで
 古本屋に出ている。品余りなのか、たいてい1冊数百円程度で売られている。
 教養の値段として、あまりに安価ではないか。PM読者にもお勧めしたい。

  さて、28巻の最後には、日本の記録である『戦没学生の手記』が収められて
 いる。編者山下肇氏の言葉を引用して結びとしたい。

  「読者たちが(中略)これ(注・戦没学生による手記)を読むとき、多少とも
  過去の戦争時代の日本に憧憬的な幻想を抱いたり、戦没学生の一人
  ひとりを軍国主義的な意味での英雄視したりすることによって、仮にも
  再び戦争への道をひらく動きの方向へ揺れ迷っていってはならないと
  いうことである。」「学徒たちにとって、これ以上の冒涜はないのである。」
  「当時の狂った環境の中でもなお冷静に人間的に思考しようとする知性の
  目覚め続けていることを、賢明に鋭く読みとってほしい。」
  「戦争犯罪人たちがまたしても今日再び戦争挑発にのりだして、
  ファシズムの倫理を美化し、真実をゆがめ、過去を忘れさせようと躍起に
  なっているのである。我々は過去を忘れず、それを未来の国民や人類の
  幸福のために強く生かし、真実を正しく守り伝えなければならない責任を
  持っている。」

  これがなんと昭和30年代に書かれた言葉なのだ!昨今の世情の中に
 生きる私たちへの、数十年をこえた檄文に聞こえはしまいか!

 ------------------------------------------------------------

構成:【PeaceMedia】/(C)へいわ屋 2007年2月記 :




第6回に戻る ≪ 「漫筆」 ≫ 第8回に進む

こちらは【PeaceMedia】 の特設サイトです。
連載者+αをご紹介しています。
▲ 『へいわ屋漫筆』 トップに戻る

▲このページの先頭に戻る