蒸し暑さもたけなわ。京都の夏ですね。おとろえがちな食を補うため、
店主は鰻を食べに行くことになりました。繁華街の老舗鰻屋さん。
実は店主は今まで、その築八〇年位の建物の造作や風情を見物する事に
重きをおき、肝心の鰻料理に関してあまり意識をしていませんでした。
不遜な事に。しかし、今回久々に訪れ、めでたく「錦糸丼」を頂いてみたら…
何という滋味でしょうか!大変結構に思われました。
以前と今回、何が違うのでしょうか。
そう、思いあたることは、「現在の私は肉体労働をしている」 ということです。
以前は体を動かす事の少ない業務に就いていましたが、今は立ち放し
走り放しの立派な日雇い労働者です。疲れた体は、どうやら鰻の蛋白質、
しょうゆの塩分等々を欲しがるらしいのです。世の中に濃い味付を好む人が
多く、そうした商品が多い理由がよくわかりました。
同じように、以前の私はかき氷にバニラアイスや練乳をかける人の気が
知れぬと思っていました。かき氷の粋は「みぞれ」につきると思っていました。
それが今では毎日食べたくなるのは「練乳あずき」に他なりません。
これも労働により、ハイカロリーを欲しているのでしょう。
読者の皆さん、「何を下品な、食べ物の話か」 と仰らないで下さい。
私は自分の食欲の変化により、世の労働の苛酷さを思い知りました。
現在の私を含め、「働き、食べ、眠る」 くりかえしだけの生活をしている
人はいかに多いことでしょう。現在の私を含め、そういう生活を送っている
人たちは、平和についてじっくり考えたり、具体的な行動をとる余裕が、
悲しいくらいありません。
それでも私を含めた彼らこそは、「平和に」「幸せに」暮していくべき者では
ないでしょうか。というか、「平和に」「幸せに」暮らしたいのです、私は!
そういう生活を送っている人たちをも包む、実感可能な平和の行動、発信、
提案を行いたいと、ひとしきり考えていました。 夕立を聴きつつ。
|