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 『へいわ屋漫筆』 第2回 へいわ屋読書感想文

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第2回PDF版 :

   PM読者の皆さん、こんにちは。暑い日々をいかが過ごされましたか?
  広島、長崎に赴き、追悼された方もおられるでしょう。地域の平和の
  集いに尽力された方も多いでしょう。夏、平和を希んで過ごされた方に
  敬意を表します。

   へいわ屋店主はどう過ごしていたかといいますと…。
  平和グッズをぼちぼちとつくるかたわら、ひたすら本を読んでいました。
  ちょっと変わってるかもしれませんが、店主には、季節によって読みたくなる
  本があるのです。多分一番初めに出会った季節と関係しているのでしょう。
  ともかく、「へいわ屋夏の必読書」は、どうしても『火垂るの墓』はじめ、
  野坂昭如氏の著作ということになるのです。今年はついに野坂昭如全集を
  読み終えることができました。

   氏の作品は、店主にとってなぜか非常に身近に思えるのです。テーマに
  「戦争」をはじめとした大惨事、世代をこえた確執を扱っていても。懐かしさ
  さえ感じてしまいます。それは多分「関西人の」「リアルな」目を通して
  描かれているからではないでしょうか。登場人物は皆、店主の耳になじんだ
  関西弁を話し、ウソのない感情や行動を見せるからでしょう。
  野坂氏は多作な人ですが、どの作も、例えば店主が入り込んだとしても、
  普通に登場人物として動いていそうな、空恐ろしいリアリズムがあります。

   でも「身近に思える」だけでこんなに引き込まれることがあるでしょうか。
  それをしばらく考えていて思い当たりました。店主は野坂氏の作品を読む
  ことで、戦時を実体験してきた人の「記憶」を共有できそうだと期待してる
  から、なのでしょう。読めば「あの時」どんな心持だったのか、リアルに体感
  することができるように思うのです。

  当時若かった人、子供だった人、親だった人、老いていた人…
  それぞれに今の自分を重ねてしまいます。つながりや近しさを感じるのです。
  開戦、軍国社会への変貌、空腹、貧困、出征、別離、空襲、被爆、終戦、
  戦後の安堵や混乱。そういった事柄がどんな記憶として人々に刻まれたか、
  ひたすら知りたくて、店主は野坂氏の作品を読みに読みます。

  正直に言うと、「戦時を知らなきゃ」という義務感第一で読んでいるわけ
  ではないのです。店主は常々「私ならその時どう生きただろ」と自問して
  いるのです。当時の二十何歳の人と、今の店主が、時空が捻れでもして
  出会ったら、対等に話ができるかしら。
  そうした日が来ないでもないから(笑)本の中で思う存分追体験し、頁の
  中で戦前戦中戦後を生きてみているのです。
  (ああ、時空を捻らずとも、今なら当時の20代の人と話もできるし握手も
  できますね。直接戦争体験をお聴きするのも、店主は非常に有意義に
  思っています。)

   戦後、自らの記憶をペンに託し、蜘蛛が糸を吐くように数々の傑作を
  繰り述べてきた野坂氏。小学生のとき 『火垂るの墓』に出会って以来、
  店主はその蜘蛛の巣から離れがたいのです。そんな野坂昭如氏の作品の
  中から、皆さんにお勧めしたい作を挙げて、へいわ屋の夏の課題の提出
  としましょう。

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   『戦争童話集』 (野坂昭如:著 中公文庫)

  野坂氏には異色の童話集です。非常に読みやすいので、子供さんも
  大人の方も味読していただきたい一冊です。「大人の世界」を知り尽くし、
  書き尽くしている野坂氏が、あえて (彼の特徴的な) 煩雑な表現を
  そぎ落とし、 平明清澄に描いた短編集。けれども、だからこそ、胸に
  迫る感動がすごい。薄い一冊ですが、へいわ屋は何度も本を伏せて
  ため息をついていました。

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構成:【PeaceMedia】/(C)へいわ屋 2006年8月記 :


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